Paul Lorenz氏による武田竜選手のショートターン分析動画
あのPaul Lorenz氏が、日本の技術選チャンピオン武田竜選手のショートターンを分析解説した動画を出している。
もちろん英語だが、英語の自動字幕機能を使って一時停止しながら見れば、おおよその内容は理解できると思う。
冒頭で「技術選の採点基準は私には理解が難しい」と皮肉(だろう)を交えているのはご愛嬌。
私には全文を訳せるほどの英語力は無いので、ここではその分析内容の大意を紹介しようと思う。私の読解の拙さから一部に「超訳」が入っているかもしれない点はご了承いただきたい。
Paul氏による分析解説内容(大意)
ポイント1 (0:56~)
武田選手がターンに入って最初に行っていることは、エッジを切り替えることで、これはスキーの向きや進行方向を変える操作よりも前に行なわれている。
ポイント2(1:13~)
身体の移動方向とスキーの向きの間に角度をつける(いわゆる「迎え角を作る」)ことを、脚部の伸展運動によって実現している。
ひとたび迎え角を作ったら、スキーをエッジライン上で「ロック」(「グリップ」と言ったほうがイメージしやすいかもしれない)して、そこから先は純粋なカービングでターンを仕上げている。
ターン始動直後に脚部の伸展を行うことは、迎え角を作るという効果の他に、スキーが作り出す向心力(=遠心力)に耐えやすい姿勢を作り出す効果も持っている。
ポイント3(1:45~)
雪面をとらえたスキーが、身体をそれまでの進行方向とは反対に押すのに十分なだけの向心力を生んだならば、脚部に入れていた力を抜くことで、スキーから身体が受ける向心力を弱めていく。これによって、身体の進行方向はそれ以上変わらず、スキーに残された向心力は「反発力」となって体の下を通って山側(次のターンの外側)へと移動する。これによって「体を谷に落とす」ことが可能となる。
ポイント4(2:19~)
脚部の伸展動作によるスキーの方向づけ(迎え角作り)は、「身体が移動する方向」と「スキーの向き」を異なるものとする。スキーをグリップさせると、その先のどこかで身体とスキーが「交錯」することになる。その瞬間に両スキー・両膝・両腰・両肩を結んだ先がそれぞれ並行となる、いわゆるスクエアポジションとなるように調整している。
まとめと所感
見た目のフォームではなく「スキー」と「身体」それぞれに生じる運動(移動)の状態、そしてそれらの間で相互に作用しあっている力の関係から連続ターンを解析する、非常に汎用性・実践性の高い解説でないだろうか。
特に、身体と、迎え角を作ってグリップしたスキーとが「交錯」するポイントを意識し、そこでスクエアポジションを取る、すなわち「作られた外向傾」を解除する、というところは、「外向傾過多」のオールドスキーヤーである私にとって示唆に富んでいる。
それと、スローで見て気づいたのだが、技術選チャンピオンですら、瞬間的に見ればシェーレンになったり外脚単独操作となったり膝下三角窓ができたりすることもあるのだ。
一般スキーヤーにおいてはなおのこと、連続する運動の中の一瞬を切り取ってフォームを良いだの悪いだの言うのは本質から遠のく行為であると考えるべきだろう。
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