スキーグラフィック1月号のX脚特集を読んで

X脚問題

久しぶりに購入したスキーグラフィック2020年1月号に、《学生スキーヤーの「X脚」を狙い撃ち!》という記事があった。

購入した時点ではこの記事の存在には気づいていなかったのだが、後で発見してこれは取り上げないわけにはいかないと、内容をじっくりと読んでみた。

#なんで「学生向け」の体裁なのかよくわからないが…。

記事を読んでみて、良い点が2つあるように感じた。

良い点1. X脚を原因別に分析している

この記事では、X脚が発生する原因を4つに分けて、それぞれに見開き2ページずつ(後述する「第4の原因」については1ページ)を割いて分析と解消法を提示している。

これは非常に良い点で、世の中にあるX脚解消のハウツーは、ほとんどがどれか1つの原因にしか触れていない。そのためそのハウツーで示されている対策法が自分自身にマッチするかどうか、やってみなければわからないという難点がある。

この記事では、原因別にX脚をデモンストレートした写真が掲載されているので、読者が自分自身の滑りを撮影した映像とその写真を見比べることで、自身がどの原因に当てはまるのかを視覚的に確認することができる。

もちろん対策についても、自分が当てはまる原因についての対策を読めばいいので効率的だ。

良い点2. 技術だけでなくマテリアルにも注目している

突然だが、基礎スキー業界はなんでもかんでも「本人の技術」のせいにしたがる傾向があると思う。

何かが悪い原因を道具に求めるなんてのは「甘え」だ、という風潮だ。

しかしこの記事では、X脚の第4の原因として、マテリアルがスキーヤーに合っていない可能性にしっかりと焦点を当てている。

何か問題が起きているとき、道具に原因があるのに必死に技術で修正しようとするのは効率的ではないし、最悪の場合、身体の損傷などといった別の問題を引き起こしてしまう可能性がある。

なんでもかんでも自分の技術のせいにする間違ったストイックさに陥ることなく、冷静に、広い視野を持ち、道具についても見直すことはX脚に限らず必要なことだと思う。

ちょっとした懸念点も

このように、この記事は非常に実効性が高い有益なもので、雑誌のいち記事にしておくのは勿体なく、ぜひとも適宜加筆編集した上で何らかの書籍に収録してほしいぐらいだ。

だが、わずかな懸念点が無いわけでもない。それは、最初のページに書かれているリード文章が、 「X脚の矯正」それ自体が目的化しかねない書き方になっている点だ。

例えば、記事には「検定や大会のジャッジングでは、両すねがそろっているか否かも注視します。」とある。これ自体はおそらく事実だろう。

しかし、全日本トップクラスになると、逆に両すねの角度が揃っていなくとも高評価を得られる選手もいる、ということにも言及してほしい。その事実からは「両すねを揃えることは、決して最終目的ではなく、より強い滑りに至るための手段である(「強い」の定義には種々様々あるだろう)という結論が導けるはずだ。

X脚の解消それ自体を目的にしても、結果として例えば板の反発を生み出せない滑りになってしまっては意味が無い。あくまで高レベルの滑りに至る一過程として、X脚が阻害要因になっているのであれば取り除くべきだ、という言い方にすべきだろう。

いや、よく読めばそのように書いている※1例えば「…うまくカービングで滑れない壁です。これらの壁は…X脚の症状があるために立ちはだかってくるケースがほとんどなのです。」(同記事より)という記述は、よく読めばX脚が別の目的(うまくカービングで滑る)を達成するための障壁である、と読める。から問題無い、という意見もあるかもしれない。確かにその通りなのだが、現状として日本基礎スキー界ではX脚というものが絶対悪とされすぎている。影響力のあるメディアには、もっとはっきりと、以前紹介した海外のサイトのように「無視していいX脚もある」「X脚とは『原因』ではなく(何か別の問題点が形になって現れている)『症状』である」ということを、明言してほしいというのが私の希望だ。

この記事は、そんな(基礎スキー業界から見た)「非常識」に、説得力を持たせられるだけの力がある記事だと思う。今回の記事単発で終わることなく、今後引き続いてのアピールに期待したい。

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1. 例えば「…うまくカービングで滑れない壁です。これらの壁は…X脚の症状があるために立ちはだかってくるケースがほとんどなのです。」(同記事より)という記述は、よく読めばX脚が別の目的(うまくカービングで滑る)を達成するための障壁である、と読める。

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