2017アルタバディア男子GS マルセル・ヒルシャーの分析動画紹介
Reilly McGlashan氏による、2017年ワールドカップ アルタ・バディア大会(GS)でのマルセル・ヒルシャーの滑りを分析解説した動画。
英語の音声のみでの解説なのでややハードルが高いが、Youtubeの自動字幕機能を使うことによって理解が幾分容易になると思う。
ポイントは4点挙げられている。
1.ノーズ・ウィリー
1点目は、Reilly氏が「ノーズ・ウィリー」と呼んでいるテクニックだ。カービングでクリアできないタイトなライン取りをしなければならない箇所で、切り替え直後にスキーのトップのみを接雪させ、テールを浮かせてスキーの向きを大きく素早く変える動きだ。
普通の選手はこのようなとき、スキー全体を接雪させたままでずらすことでスキーの向きを変えているが、それだと除雪抵抗や摩擦抵抗が生じてしまう。それを避けるためスキーの大部分を宙に浮かせてスイングするという技術だ。
Reilly氏も「常識離れした」(insane)と評する通り、これはおそらく非常に難しい技術で、一般人が容易に真似できることではないと思われる。
2.柔らかいエッジング
2点目は「ソフト・エッジング」すなわち柔らかいエッジングだ。正確には、むやみやたらと強いエッジングを求めにいかず、ソフトなエッジングをするべき時と、強くエッジングするべき時とをしっかり区別し使い分けている、という点だ。そのため、スキーが雪面に叩かれて激しく振動したり、意図しないズレを生じたりするということが無い。
3.リラックス
3点目は非常にシンプルなキーワード「リラックス」だ。
Reilly氏によると、ヒルシャーはレースを通じて「極めて」(extremely)リラックスしている―正確には、リラックスすべき時と、力を入れるべき時とを明確に区別している、という。
4.短いプレッシャー
4点目は、「ショート・プレッシャー・フェーズ」すなわち短い時間でプレッシャーを与え、終わらせるということだ。
そして、ここまで挙げてきた3つのポイントは、このことに繋がる要素でもある、という。ヒルシャーが「エッジに乗っている」のは、ゲートの直前から直後までにかけての区間のみであり、それ以上に長くエッジングを続けるようなことをしていない。
以上4つのポイントが挙げらているが、1つ目の「ノーズ・ウィリー」については非常に高度でフィジカルの強さも要求する技術であるが、残り3点は「ソフトなエッジング」「リラックス」「短いプレッシャー」と、ヒルシャーの力強い滑りから連想される「剛」のイメージとは正反対の「柔」の性質を帯びたものであることは、注目に値すると言っていいだろう。
現代アルペンスキーの「粋」が詰まった動画ではないかと思う。
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