ターン中に重心を下げることによる遠心力の変化の検証
遠心力というのは、回転体の重心が回転中心から遠くなればなるほど大きくなる。したがって、スキーヤーはターン中に重心を低く(=スキーに近く=回転中心から遠く)するほど、強い遠心力を受けられる、ということを以前の記事で書いた。
これについて、ある程度定量的に試算してみたい。簡単に遠心力を計算できるサイトを発見したのでこれを利用する。
これを利用して「重心が高い場合」と「低い場合」の遠心力の差を計算してみたい。
高い場合と低い場合で変わらないパラメータとしては以下を設定する。
回転物の質量 m | 90kg | 私(筆者)の体重。 |
回転速度 n or ω | 10.4rad/s | 1秒に60度の角速度。1ターンを3秒で行うのと等しい。 |
その上で、回転半径 rを
(1)20m
(2)20.5m
と数値を変えて計算する。
(1)が直立に近い重心が高い姿勢を想定、(2)が50cm重心を下げた姿勢を取った場合を想定している。
もちろん、重力加速度や各種抵抗による減速、たわみの解放による加速といった要素は考慮されていないので、あくまで目安である。
計算結果は以下の通りとなった。
(1)の場合(高い姿勢)
- 遠心力:198.527kg重
- 接線速度:74.88km/h
(2)の場合(低い姿勢)
- 遠心力:203.49kg重
- 接線速度:76.752km/h
※(1)と(2)で接線速度が違うのは、計算する対象が「重心の位置」だから。重心が高い方が重心が回転中心に近いため、ある一定の時間をかけて1回転する場合(=角速度が一定の場合)、接線速度は遅くなる。
どちらの場合でも体重の2倍(=2G)を超える負荷がかかることになる。ちなみに訓練を積んでいない人間が耐えられる限界は6Gだそうだ。それと比べたら低いとはいえ、マシントレーニングのレッグプレスでウェイトが100kgを超えるとかなりきつくなるので、やはり脚(膝)を大きく曲げた状態で高速ターンするのは無理があると言えるだろう。
さて、重心が高い場合(1)と低い場合(2)とで遠心力に約5kg重の違いが出ることがわかった(以下「重」は省略)。わずか5kgと思えるかもしれないが、遠心力が5kg小さいということは、例えて言うならターン内側の手に5kgの物体を持って滑るのに近い。実際やってみると、2リットルのペットボトルを持った場合ですら、それを持たない場合と比べ、意識的に外傾を強くしないとバランスが取れなかった。重心を低くすることによってそれを「捨てる」のと同等の効果を得ることができるわけだ。そうすることで、より少ない外傾量でバランスを取ることができるし、同じ外傾量であればより深く内傾することができるはずだ。
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