斜面に立ったときのスキーをたわませる力の大きさについて

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前の記事で、だいたい60kgぐらいの人であれば、「正しく乗る」だけで十分にスキーをたわみ切らせることができそう、という趣旨のことを書いた。

だが実際にはスキーヤーは斜面に立っている。そのため、体重を全てスキーをたわませる力として利用することはできない。必ず、体重のうち一部はスキー+スキー板を斜面下方に落下させる力(これをここでは「推進力」と呼ぶことにする)として作用する。

推進力とスキーをたわませる力は、重力によってスキーヤーが地球の中心に向けて引っ張られる力(M)を、斜面と平行な成分と斜面に垂直な成分に分解した分力だ。これらの大きさは三角関数によって計算できる。斜度をθとしたとき、

推進力=sinθ×M

スキーをたわませる力=cosθ×M

となる。

体重60kgのスキーヤーを例にとって、斜度ごとに推進力とスキーをたわませる力がどの程度働くか、およびスキーをたわませる力と体重との比率を計算したのが次の表だ。

斜度(θ)推進力(kg重)スキーをたわませる力(kg重)スキーをたわませる力と体重の比
1010.4259.0998.48%
2020.5256.3893.97%
3030.0051.9686.60%
4038.5745.9676.60%
5045.9638.5764.28%
6051.9630.0050.00%
7056.3820.5234.20%
8059.0910.4217.36%

60kgの人が30度の斜面に立つと、スキーをたわませる力は約52kg※1正しくは「kg重」だがここでは省略。。両脚均等荷重だとするとスキー1本あたりに対し26kgとなり、先の記事で5cmたわませるのに必要だった30kgに4kgほど足りないが、実際には外脚荷重であること、またスキーをたわませたい場面であるターン中には、遠心力もこれに加えて利用できることを考慮すると、必ずしも「力不足」になるとは言えないだろう。

ちなみに余談だが、これの応用で、直滑降したときの加速度(摩擦抵抗や空気抵抗は考慮しない)を求めることもできる。体重が全て落下のために使われる場合(自由落下)、加速度は9.8m/s^2、つまり、1秒毎に秒速9.8mずつ速くなっていく。斜面を滑り降りる場合、この重力加速度に、「推進力と体重の比」を掛けた数字が、加速度となる。

加速度=(sinθ×M)/M×9.8m/s^2

整理して、

加速度=sinθ×9.8m/s^2

斜度ごとの加速度を計算したのが次の表。速度は日常生活でイメージしやすいkm毎時に換算した。

斜度(θ)加速度(km/h/s)
106.13
2012.07
3017.65
4022.69
5027.04
6030.57
7033.17
8034.76

摩擦抵抗や空気抵抗を考慮していないので、この数値は体重にかかわらず一定だ。

静止状態から30度の斜面を3秒間直滑降すると、各種抵抗がなければ17.65×3=52.95km/hまで加速する、ということになる。なんか感覚的にはもっと速くなりそうな気がするが、「静止状態から」というのがキモで、スキーヤーの主観としては、スケーティングなどを使ってある程度加速した時点で「直滑降を始めた」と認識することが多いせいだと思われる。

 

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1. 正しくは「kg重」だがここでは省略。

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