角付け角と最大たわみ可能量の関係

投稿者: | 2018年11月6日

前の記事で、スキーをたわませる量に、スキーにかける力の大きさはあまり影響が無い(人の体重ほどの物体であれば問題なくたわむ)ということを書いた。

これをある程度定量的に検証したい。

といっても、たわみ量の決定式には、弾性係数だとか断面二次モーメントだとかいったデータも必要になってくる。さすがにこれらの数字はメーカーから公表されていないし、実測するだけの器具も能力も持ち合わせていないので、ここでは「ある角度で角付けしたとき、最大何mmたわませることが可能か」を幾何学的に計算することにしたい。

経験のあるスキーヤーなら、この数値を見れば、「これくらいならたわませることができそうだな」とか「これだけたわませるにはただ体重を乗せるだけでは足りなそうだな」などとある程度の勘が働くものと思う。

検証対象としては、実際のスキー板のプロフィールを借用する。

NORDICA DOBERMANN SL R FDT(165cm)

SL準レーシングモデルだが、基礎スキーヤーにも人気のショートターンモデルだ。

サイドカットは120mm-69mm-104mm。これを床に横向きに立てて置いたとき、トップとセンターとテールが描く弧が、床との間に空ける隙間が最も広い部分は17mmから25mmの間となる。

正確な数字ではないが、ここでは隙間の最大幅は中間を取って21mmとする。これを雪面に対して角付けした状態が下の図だ。θが角付け角。aがそのときの「最大たわみ可能量」だ。

三角関数により、a(mm)=21×tanθと計算できる。

下の表が、角付け角10度刻みでの最大たわみ可能量の計算表だ。

θtanθ最大たわみ可能量(mm)
100.17633.70
200.36407.64
300.577412.12
400.839117.62
501.191825.03
601.732136.37
702.747557.70
805.6713119.10

30度スキーを傾けたときで約1.2cm、50度なら2.5cmほどたわませることができれば、板が「たわみ切る」ことになる。角付け角が大きく(深く)なればなるほど、指数関数的に最大たわみ量は増加する。60度ぐらいまでであれば比較的用意にたわみ切らせることができそうだが、80度も傾けて滑るとなると相当な加圧が必要になるだろう。なお、実際の滑走では、雪面を「彫り込む」形となるので、これらの数値よりも若干大きなたわみ量が可能となるはずだ。

板を壁に立てかけて手で押す程度でも、数cmはたわませることができるはずだ。であれば、人間の体重の半分以上が乗る外スキーをたわませることは、踵だの母指球だのと細かいことにこだわらずとも、正しい方向から正しい場所に乗りさえすれば、十分にたわむということが推定される。

なお、手元の板でごく大雑把に実験してみたところ、5cmのたわみを作るのに必要な荷重は約30kgだった。計算上、体重60kgの人がしっかりと体重の半分以上を外スキーにかければ、板を70度ほども傾けたとしても十分にたわませることが可能、ということに理論上はなるわけだ。

では、スキーヤー特にレーサーには必須とされる、脚部の伸展による加重操作、いわゆる「スキーを踏む」操作は全く不要なのかというとそういうことは無く、能動的にスキーに圧を与えることは「たわませる速さ」を高めることに寄与する、と私は考えている。これについてはまた別の記事で考えを述べることにしたい。

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