「腕の構え」は何のため?

投稿者: | 2018年4月30日

基礎スキーでは腕の構えやストックの持ち方がものすごく重要視される。全く同じスキー操作でも腕の構えやストックの角度で点数に違いが出るほどに。

シルエットの美しさを競う競技としてはこれは当然のことと言っていいだろうが、美しさを競わない場面、すなわちレクリエーションスキーやアルペン等の競技スキーにおける「腕の構え」は、滑走にどのような影響を及ぼすのだろうか?

以下は全て仮説です。

スキーで腕の構えを考えるとき主に言及されるのは、「手の高さをどのくらいにセットするか」「手をどのくらい前に出すか」「左右にどの程度広げるか」あたりであろう。

腕を高く/低くすることによる効果

腕の位置が高ければ、その分だけスキーヤーの重心は高く、低ければ重心は低くなる。

腕を前/後ろにセットすることによる効果

腕を前にセットすれば、その分だけスキーヤーの重心は前に、後ろにセットすれば後ろに寄ることになる。

腕を左右に広げることによる効果

腕を左右に広げると、スキーヤーの慣性モーメントが増大する。つまり、回転しにくく、また回転を止めにくくなる。

フィギュアスケートの選手が3回転や4回転のジャンプをするとき、腕を体に密着させるが、これはその姿勢を取ることで慣性モーメントが減少して回転しやすくなるため。腕を広げるということはその逆をやることになるので、回転しにくくなる。

よくやるバリトレで、腕を胸の前で組んで滑る練習メニューがあるが、あれはあえて上半身が回転しやすい状況を作って、その状況でもなお上半身がローテーションしないように意識して滑ることで、ローテーション防止を身につける意義がある。

また、どちらか片方の腕のみを横に広げると、広げた方へ重心が横移動する。

これらの効果を理解して、例えば「重心を前に、かつ低くしたいので、腕は斜め前方下45度ぐらいにセットする」「上半身がローテーションする癖があるので、腕を左右に広く構えて上半身を回転しにくくする」「クロスオーバーが苦手なので、切り替えのときには意識的に谷側の腕を横に広げる」など、自分にとって滑りに良い影響を与える腕の構えを追求するといいのではないだろうか。

肘はどうする?

上述した「腕の角度調整による効果」を効率よく得るためには、肘は伸ばした方がいいだろう。腕を前に出して重心を前にセットしようとしても、肘をたたんでしまうとあまり重心が前に出なくなってしまう。上下や左右についても同じことが言える。

デブはどうか

デブは標準的体格の人よりも重心が高いので、重心を低くできる滑走姿勢を工夫したい。また、上半身の質量比率が高く上半身が回りにくい傾向にあるため、ある程度上半身を積極的にターン方向に向けていきたい。また、重心が高いことにより左右への重心移動は元よりしやすい傾向にある。

となると、「手の位置は低く」「腕はあまり左右に広げない」という構えが相性が良いように思われる。私は、腕は「ストックを、体の左右にスキーと平行になるようにそっと置く」ようなイメージで、手がブーツの少し前ぐらいのできるだけ低い位置に来るようにセットしている。こうすると自然と上半身の前傾も導かれるので一石二鳥。

イメージとしては上の図のような「つもり」でいるのだが、実際にはこんな極端な姿勢になることはなく、下の写真みたいな感じになる。なんというか「普通」だが、その「普通」を導き出すために、私の場合上の図のようなイメージが必要だということ。

また、ダイナミックな左右への重心移動をしたいとき(主にGSポール)には、切り替えのときに腕を左右に広げる動きも交えている。

手首の角度は?

ストックを「突く」という動作を考えないならば、手首の角度はほとんど滑走に影響無いように思う。手首の角度によってストックの向きが変わるので若干の影響はあるだろうが、腕と比べてストックの質量は非常に小さいので、影響は少ないだろう。

ストックを突く動作を考慮するなら、ストックのリングは常時低い位置にあった方が突くための動作は小さくできる。また、ストックは鉛直方向(重力の向き)に突くという原則にのっとるならば、ストックはあまり「ハの字」状にせず、体に沿うような形で保持しておいた方がいいだろう。

以上より、原則的には、グリップエンドが前方正面やや上方を向くように保持しておくのが良いと思われる。

余談

例の「自然で楽なスキー」が華やかなりし頃、基礎スキーのトップスキーヤーがこぞってターンの入りで腕を高く振り上げるのが「なぜ?」と取り沙汰されていた。こうして考察してみると、もしかしてあれは「上下動をしていないように見せつつも、実際には重心を上下に動かすため」だったのではないか?と思い至った。当時の風潮として、あからさまな上下動が否定されていたという事実もあわせて考えると辻褄が合う。

(腰をリフトアップする形での)上下動はNG。でも重心を上下させなければスキーに強い圧を与えられない。だったら腕を使って重心を上下させればいいじゃないの!というわけだ。体幹と比べれば質量が小さい腕だけの操作でどの程度の重心上下動の効果が得られるかわからないが、もしこれが事の真相だったとすると、なんとも涙ぐましい努力を強いられていたものだなあ。

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