志賀高原について

2018年11月30日スキー場を語る

志賀高原。

そこは、単に日本最大級の複合スキー場群というだけではなく、日本に住むスキーヤー・スノーボーダーたちにとってある種のアイコニックな地位を占め続ける土地だ。

BGMの流れない広大なゲレンデの中には、1日に標高差20,000mを滑ることを生きがいにしている集団や、ものすごい腕前でライドする長身の初音ミク(スノーボーダー)などが棲息している。

ニセコや白馬、近年では野沢温泉なども、外国人訪問客がかなりの割合を占めるようになってきたが、志賀高原はそれほど外国人が多くない。これはひとえに彼らの言葉で言うところのアプレスキー、いわゆるアフタースキーの楽しみが、志賀高原にはその立地条件ゆえにほぼ無いからという理由だろう。

私はゲレンデにいる外国人客の存在を疎ましく思うものではまったくないが、某スキーの聖地の麓のタウンのように、どこからどう見ても日本人顔日本人体型な私に対して日本人店員が開口一番“Do you have a reservation?”と聞いてくるような土地(実体験)で感じたほどのアウェイ感を感じなくて済むのであれば、そのような土地よりは志賀の方を好ましく思うのは致し方ないところであろう。

ここまで書いておきながらなんだが、私はそれほど志賀に足繁く通っているわけではない。一時期志賀を拠点にポールトレーニングをしていたので年10日ほど滑っていたが、今はかぐらでトレーニングするようになったので今シーズンは計6日、旅行回数で言えばたった2回しか訪れていない。

それでも、気持ち的には志賀がホームゲレンデと言える、どこに行こうか困ったらとりあえず志賀でいいかと思わせる、そんな魅力が志賀高原にはあるように思う。

私の感じる志賀の魅力、それは…

混まない

「混むか混まないか」、これは私がゲレンデの善し悪しを判断する最重要ポイントだ。どんな素晴らしい斜面も、人だらけでは滑ることよりぶつからないことに腐心せざるを得ない。リフト券売り場の行列、リフト乗り場の行列(特に日本のリフト行列はどこも無秩序そのもの!)、あるいはホテルのチェックイン行列や朝食入場待ち行列。これらはスキー旅行から「リゾート性」を一気に削ぐ要素だと思う。

その点志賀は、ゲレンデも宿泊施設も「分散型」なので混雑回避が容易だ。もちろん滑走場所や宿泊先の選び方次第では混雑に巻き込まれることもあるが、少し志賀に慣れれば、ある場所で混んでいても「あそこなら空いてるな」と見当がつく場所が必ずあるし、混雑しない宿の選定にもある程度鼻が効くようになってくる。

多様性

ゲレンデにおける多様性と言ってもピンと来ないかもしれないが、ようするに「いろんな奴らがいる」ということである。

どことは言わないが、他人をポールと勘違いして爆走するレーサーばかり、景色も見ずに自分のフォームにご執心の基礎屋ばかり、目の色変えてノートラック求め他人を押しのけるパウダージャンキーばかり、格安ツアーで押し寄せリフトの乗り方もわからないまま放り出されたスノーボーダーばかり、そういった「○○ばかり」で染められたゲレンデというのは、私は嫌いだ。

志賀には実に「いろんな奴ら」がいる。レーサー、基礎屋、太板持ち、家族連れ、修学旅行生、リタイヤ組、痛板ライダー、コスプレスノーボーダー、etc。広いゲレンデを分け合って、それぞれがそれぞれの楽しみ方をしている。そんな中にひっそりとヒトリストとして混ざるのが好きだ。

修学旅行生たち

志賀といえば学校行事スキー、いわゆる「修旅」のメッカ。修旅団体を疎ましく思う向きもあるが、私はそうでもない。

彼らは基本的には上級者コースには入り込まないし、焼額山・奥志賀には来ないので、こちらがガチ滑りしたいというときに邪魔になることはほとんど無いのだ。

逆に、前述したゲレンデの多様性を演出するのに一役買っていると思う。

「適度な」雪質

もともと雪質というものにはそれほどこだわらない方だ。むしろあまりにも軽くて抵抗感の無い雪だと、スピードが出すぎて怖い。適度な抵抗があって、この体重をしっかり受け止めてくれるぐらいの雪質の方が好きだ。

志賀の雪質は本州屈指だというが、個人的には、白馬や中央道沿線(車山とか)の雪よりは一段重いように思える。そしてそれが自分にとって「適度な」雪質だと感じる。もっとも、たまに遭遇する腰ぐらいのパウダーを普通のデモ板で滑っても、難なく滑れるあたりはさすが志賀と言わざるを得ない。湯沢らへんだと腿ぐらいの雪でも思い切り後傾にならないと刺さって埋まるからなぁ。

冬の志賀ギャラリー

夏の志賀高原

冬と比べ、夏の志賀高原は閑散としている。国道292号沿い、特に渋峠周辺は賑わっているが、それを外れた一ノ瀬や奥志賀周辺は本当に人が少ない。標高1500m前後で海から離れ湿度が低く、避暑地としては最適だ。私は毎年夏、お盆周辺の「どこに行っても混む」時期は奥志賀のペンションで過ごすのがここ数年の恒例となっている。

冬には湯田中から国道292号で上がってくるしかアクセスルートが無い志賀だが、夏には意外なほど多方面から道が通じている。国道292号渋峠越え(志賀草津道路)が有名だが、その他にも野沢温泉からのルート※1長野県道502号奥志賀公園栄線、秋山郷からのルート※2雑魚川林道→県道502号、山田牧場からのルート※3長野県道66号豊野南志賀公園線があり、いずれも狭路ではあるがしっかり舗装されており快適な山岳路ドライブが楽しめる。

この他変わったところとしては、竜王ロープウェイを利用して竜王山、焼額山を経由して志賀入りする徒歩ルートもある。これは冬には竜王越えツアーコースとして利用されるコースでもある。夏でも初心者向けとは言い難い登山道だが、少し山慣れた人なら問題無く踏破できるだろう。

最もマニアックかつ危険なアクセスルートが、山ノ内町・土橋地区から奥志賀牧場付近を経由して奥志賀に至るルート※4白沢林道だ。ほとんどの区間が未舗装、すれ違い不可の1車線、急坂と急カーブの連続、もちろんガードレールなどほぼ存在しない。一度、降雨後のこの道を志賀から下る方向に走ったことがあるが、生きた心地がしなかった。ここは本当にオススメしない。行くならオフロード用二輪だろう。

まあそういった明らかな危険に近寄らなければ、夏の志賀は実にいいところだ。一見観光スポットなど何も無いように思えるが、岩菅山登山、稚児池(焼額山山頂)、大沼や四十八池の散策、熊の湯の温泉、東館山高山植物園、マニアックなところでは前述した奥志賀牧場(未舗装路を走ることになるが志賀側から奥志賀牧場までなら距離も短く問題無い)など。岩菅山を除けばどれも車または夏季営業リフトを使うことで簡単にアクセスできるのでおすすめだ。少し足を伸ばせば、カヤの平湿原、山田牧場、地獄谷野猿公苑などにも十分一日で行って帰ってこれる。

夏の志賀ギャラリー

   [ + ]

1. 長野県道502号奥志賀公園栄線
2. 雑魚川林道→県道502号
3. 長野県道66号豊野南志賀公園線
4. 白沢林道

2018年11月30日スキー場を語る