デブと内傾角

投稿者: | 2018年4月21日

基礎であれレーシングであれ、カービングということを追求するときに、いかにして内傾角を取るか、ということは大きなテーマとなる(と思う)。

大きな内傾角を取りたい理由は、スキーを大きく傾けるほど、スキーのセンター部分と雪面の間に大きな「隙間」ができ、そこに向かってスキーを押し込むことで、大きくたわませることができるからだ。この隙間が無い状態でいくらスキーを強く踏んでも、スキーはたわまない。

当たり前だが、内傾角はいつでも好きなだけ取れるわけではない。十分スピードが出ていない状況で過度に内傾して転倒した経験は、だれしも一度はあるのではないだろうか。

以下は全て仮説です。

内傾角がどれだけ取れるかを決める要素はいくつかある。滑走スピード、スキーのサイドカーブ半径などが関係するが、その他にスキー・スキーヤー系(以下SS系)の重心の、スキー板から見た垂直方向の距離(以下、重心の高低と言ったときにはこの「スキー板から重心までの垂直距離」を指すものとする)も影響する。重心が低いほど深い内傾角を許容し、重心が高いほど内傾角は取りにくくなる。

究極の「内傾角スペシャリスト」は、「起き上がり小法師」だ。どんなに深く倒しても「転倒」することなくケロっと立ち上がる。なぜ「彼」が深い内傾角に対して強いかというと、重心位置が極限まで低いからだ。

なぜ重心が低いと内傾角に強いのか。それは、物体が傾いたときに、重心が左右に動く距離が小さいから。重心がほとんど底面にある起き上がり小法師は、どんなに内傾しても重心は左右にほとんど動かない。重心が低い物体と重心が高い物体を同じだけ傾けたとき、重心位置の左右への移動量は重心が低い物体の方が小さく、重心が高い物体は大きい。

スキーにおいて追求したいのは内傾の「角度」だ。重心の左右への「移動距離」は重要ではなく、むしろ重心の左右移動距離は小さい方が安定性の面では有利になる。

ここでデブの登場だ。デブは重心が高い。一定の内傾「角」を取ったときに、重心が左右に移動する「距離」が、標準的体格の人と比べて大きい。結果として、ちょっと傾いただけで内側に倒れそうになる。デブの人はなかなか思い切って体をターン内側に倒し込めない傾向がある(ように思う)のはこれが原因かもしれない。これを克服するためにも、デブは人一倍重心を低くするよう努めた方がいいかもしれない

実は重心を低くすること以外にももう一つ、内傾による転倒を防ぐ方法がある。それは外傾姿勢を取ることだ。

外傾姿勢を取ることで、SS系重心はターン外側に移動する。スキーの角付け角を決めるのは下半身の内傾角だから、上半身は必ずしも内傾している必要は無い。上半身だけを外側に傾けることで、SS系重心を外側に移動させ、角付けをする際の「スキーから見た重心の左右への移動距離」を弱めるという効果が得られる。

しかし、外傾姿勢にも弱点がある。それは、過度な外傾によって重心が外に移動しすぎると、スキーの面と、重心とスキーを結んだ線とがオフセットしてしまうということだ。

スキーをたわませるには、スキーの真上から力をかけたい。すなわちスキーの面から垂直に立ち上った線上に、SS系重心を位置させたい。適度な外傾であれば、「見た目の内傾角」と「重心の内傾角」はほぼ一致するので、スキーの面の真上に重心がセットされるが、過度な外傾姿勢を取った場合、見た目の内傾角と重心の内傾角がずれてしまうので、結果としてスキーの面の真上から力がかからず、スキーが効率よくたわまないことになる。

 

それでも、スキーにかかる力が十分に大きければ、多少力の効率が悪くとも問題無くスキーがたわむのだが、そうでない場面ではこれは不都合になる。「スキーにかかる力が十分大きい場面」というのは山回りの場面だ。山回りでは、重力(体重)もスキーをたわませる力として使えるので、外傾姿勢による内傾角オフセットの悪影響は少ない。一方、谷回りからフォールラインにかけては、重力はスキーをたわませる力としては使えず、迎え角による遠心力とスキーヤー自身の運動(脚部の伸展運動)による加圧のみでスキーをたわませる必要がある。このようなときに過度な外傾姿勢による内傾角オフセットの悪影響は大きい。谷回りからフォールラインにかけては、できるだけ重心をスキーの面から垂直に結んだ線上に位置させたい。

このためにも、やはりデブスキーヤーは外傾姿勢に頼りすぎず、重心を低くすることで深い内傾角を出す技術を身につけた方がよいかもしれない。

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